病気のこと

筋萎縮性側索硬化症

筋萎縮性側索硬化症

体を動かす運動神経は、大脳に始まり脊髄を通って筋肉にまで到達しています。
途中いくつかの神経によりリレーがあります。
この一連の運動神経が障害されて、徐々に麻痺が進行する病気に、筋萎縮性側索硬化症という病気があります。
かつては紀南地方に多く発症することで注目され、和歌山医科大学ではこの病気の研究がとても進んでいます。

同じ運動麻痺を起こす脳梗塞では、運動障害の症状が固定しており、改善することもあるのに対し、この病気では麻痺はどんどん進行します。
手足の麻痺に止まらず、話すことや食べることが困難になり、呼吸することも困難となって人工呼吸器が必要になる場合もあります。

最も顕著な例では瞬きと目を動かすことしか出来なくなる例も見られます。
しかし、一般に知能が障害されることはありません。
宇宙物理学者でビッグバンを提唱したイギリスのホーキング博士や、往年の大リーグの強打者ルー・ゲーリックがこの病気であることは有名です。
アメリカではこの病気をルーゲーリック病と呼んでいます。
この病気の原因はまだ分かっていません。

この連載で原因不明と何度言ってきたか知れず、改めて神経の病気の怖さと現代医学の無力さを感じています。
最近の研究では、神経を障害する物質を分解ししてくれる酵素がこの病気で減少していることが報告されています。
一つの大きな手がかりとして、世界中の研究者が解明に取り組んでいます。

現時点では、歩行器や車いす、また、ものが飲み込めないために起こる肺炎の予防、目の動きで作動するワープロによる意志の疎通等、色々な手段により生命の維持と生活の維持に心がける努力がなされています。
この病気は身体が殆ど動かなくなるため、本人の苦痛、周囲の人の苦労は大変なものがあるわけですが、知能は最後まで侵されません。

人として最期の最期まで生き抜くことが出来るわけです。
これは、ある意味残酷なことかも知れませんが、前向きな生き方を患者さんがされることを、医師としては切に願っており、ご家族の助けを心よりお願いするものです。