独り言

お薬について。

お薬について。

今のクリニックで、およそ10年位外来をしています。
大学病院の外来と一番大きな違いは、1週間で答えを出さなければならないことでした。
大学病院では大抵の患者さんは月1回のペースで受診します。

しかし、個人のクリニックでは翌週に受診してこられることも珍しくありません。
私は一般内科外来をしていますが、主な対象疾患は神経疾患と生活習慣病、すなわち糖尿病を主とし、高血圧、高脂血症等です。
外来を始めた頃は神経疾患の方が多く受診されました。

神経疾患は糖尿病、高血圧、高脂血症等と異なり薬物により、確実な治療効果が得られるか分からないことが多いのですが、患者さんは1週間後に受診されて薬が効いたか効かなかったかを結論づけられます。
こちらとしては、仮に1週間で効果が見られなくても、もう少し薬を続けてみて欲しいのですが、なかなか許されません。
そんなことを繰り返していたらあそこの薬は効かないと、レッテルを貼られてしまいます。

勢い大学病院とは異なる処方を余儀なくされました。
つまり、原因を治療する薬物のみでなく、症状を素早くやわらげることを常に考えて処方するようになりました。
その結果として、患者さんからは薬が良く効いたと喜んで貰えることが増えました。
でも、こちらも少し心苦しいので、「症状は和らいだかもしれませんが、
病気の原因そのものが無くなったわけではないので薬は続けて下さい。」と説明します。

しかし、中には症状が和らぐと原因を取り除くための薬まで止めてしまう患者さんもおられ、治療がはかばかしくいかないこともあります。
大先輩の先生に「開業医に来る患者さんは、良くも悪くもならない位で丁度いいと思って貰え。」と言われました。
名医の大先輩ならではのお言葉です。

反対に「せっかく良いお薬を頂いているのに良くならず申し訳ありません。」と患者さんに謝られた時は、「滅相もございません。」と患者さんに向かって最敬礼をしました。