病気のこと

高次機能障害

高次機能障害

脳の「考える働き」に関連した機能を高次機能と呼びます。
記憶もその一つです。
今自分のいる場所、時間、誰といるかということを認識することを見当識といいます。
これが障害されると所謂「ここはどこ?わたしはだれ?」ということになります。

堅い言葉で表現すると、時間・空間・人間関係という座標軸を正確に認識する能力の障害(失見当識)となります。
言葉を認識する能力も高次機能です。
この機能が失われると失語症となります。
失語症は言葉が話せないという点で、脳梗塞の麻痺による言語障害(構音障害)と似ていますが、本質は異なります。

失語症とは、頭の中に言葉が浮かばなくなる、または、相手の言葉が理解できなくなる障害です。
コンピュータに例えると、本体自体が壊れて文章を作成できなくなるのが脳梗塞の時の構音障害に相当し、機械は壊れていないのに中のワープロソフトが壊れて文章が作成できなくなるのが失語症に相当します。

日常良く行っていた動作が頭では理解しているのに実際に出来なくなる障害を失行症と呼びます。
口笛が吹けない、じゃんけんのグー・チョキ・パーが出来ない、マッチで火をつけられない、服が着られない、等の症状が起こります。

ものを見たり聞いたり触ったりした際に、それが何であるか認識できなくなる症状を失認症と呼びます。
人の顔が識別できない、色が分からない、視野の半分を全く無視してしまう。
道や場所が分からない、音楽が分からない、左右が分からない、体の部分が何か分からない、等種々の症状が見られます。

この様な、失見当識、失語症、失行症、失認症はこれらの機能を司る大脳の部位が脳梗塞で障害されると起こります。
また、大脳全体が広範に障害される痴呆症でも起こってきます。

高次機能障害は注意していないと見過ごす場合もあります。
この様な障害が原因で患者さんが怪我をする危険も大いにありますので十分注意をする必要があると言えます。
脳梗塞による失語症は比較的回復が期待できますが、必ずしも高次機能の回復は容易ではありません。