独り言

リーサルウェポン

リーサルウェポン

大学にいた時には、会議や教室のミーティングで色々と議論をしてきました。
意見が対立する時も、論理的に議論を進めてそれなりの成果を得てきたと思っていました。
今も、スタッフと色々と意見を交換する際に、相手の意見を尊重しつつ、こちらの考えも理解してもらうよう議論してうまくまとまっています。

それなのに、妻との議論はなぜか思うようにいきません。
私は元々声が大きい上によく通ります。
妻と話していて興奮してくるといっそう声が大きくなります。
すかさず妻は「そんな大声で怒鳴らなくても分かる。」と指摘します。

決して怒鳴っているつもりはなくても、そういわれると反論できないので声のトーンを気にすることになります。
当然議論のトーンも下がります。
それでもくじけずに、妻の言い分の矛盾をついて言い募っていくと、
「大の男が女子供相手にムキになるなどみっともない。」
と私の人間性に疑問を投げかけてきます。

議論の終盤私の意見の正当性を妻に認めさせられると確信した瞬間に、私の人間性に対するクレームがつくわけですが、こんな不当なクレームなど怖くない、と踏みにじれば、後にはとても気まずい沈黙が待っていることを
私は身体の隅々まで自覚しています。

この議論の発端が、私が牛乳の注文を忘れたことか、はたまた、私が食器棚の戸をいつもきちんと閉めないことか、既に定かではありませんが、このままいくと私には気まずい沈黙という価値のない勝利しかありません。

しかも、その勝利には私の人間性を代償にしてまで得るべき価値など見当たりません。
そこで、私は長年蓄積されたノウハウを駆使して妻に対する絶対的な武器を迷わず繰り出します。
いくぞ覚悟しろとばかりに言葉を発します。

「さっきはごめん。すみませんでした。」
すると妻は「こちらこそすみませんでした。」と素直に頭を下げてきます。

この最終兵器には絶対的な効果があります。
これがある限り私に敗北はないのです。

そして、勝利もありません。