病気のお話

糖尿病のお話

糖尿病の治療方針

糖尿病に関する検査を行ったのち治療方針を決めます。そのために患者さんと一緒に患者さんの糖尿病の病態の理解を進めます。

糖尿病では血糖値の上昇が起こります。その結果動脈硬化の進行が促進されます。
そして糖尿病で最もやっかいな合併症の発症が起こります。治療の目標はこの合併症の予防にあります。
そのために合併症を来す道筋を一つずつ潰していきます。
具体的には合併症の原因となる動脈硬化の抑制を目指します。
そのために動脈硬化のリスク因子である血糖値、血圧、脂質のコントロールを目指します。
さらに動脈硬化を促進する生活習慣の是正を指導します。つまり適正な食事、禁煙、適度の運動の指導です。

糖尿病の治療は動脈硬化を抑制することです。従って血糖値を下げるだけでは不十分であります。

糖尿病治療の優先順位


糖尿病の治療には大きく分けて3つあります。
食事療法、薬物療法、運動療法です。
その優先順位はというと下記のように血糖値のコントロールでも合併症のコントロールでも食事療法が最優先となります。


血糖コントロール

  食事療法

  薬物療法

  運動療法:当院では特に行っていない


合併症コントロール

  食事療法

  薬物療法

熊野路クリニックでの血糖コントロールの基本方針


当院での血糖コントロールのための治療の基本方針はインスリン分泌臓器である膵臓の保護つまり、いかにして膵臓への負荷を減らすかという点です。
食事療法も薬物療法も膵臓への負荷をいかに減らすかを考えて行います。

【 熊野路クリニックでの食事療法 】

食事療法の基本はどれくらいのカロリー摂取が適正化というところから始まります。

適正なカロリー計算は標準体重から算出されます。

標準体重=22 x 身長(m)× 身長(m)  

1日当たりの適正な摂取カロリー=標準体重x30 (Kcal)

上の式で求められた1日当たりの適正な摂取カロリーは言い換えればこのカロリーを守れば標準体重に到達するカロリーです。

何をどれくらい食べるとカロリーはどれくらいかという食事内容の指標として日本糖尿病協会が発行している食品交換表を利用することを患者さんに勧めています。
この本には食品を6群に分けてバランスよく食べる方法、1日の献立のひな型、外食でのメニューのカロリー表などが記載されており、適正な食習慣を身につけるために大変有効です。

食事はカロリーが同じでも食べ方で血糖値の上がりやすさが変わってきます。
できるだけ血糖値の上がり方が緩やかな食べ方が膵臓への負荷を減らす食べ方です。
具体的には以下のようなことです。

1.ゆっくり、少しずつ食べる、回数を増やす

これは胃からの糖分の吸収をゆっくりとし、糖分の上昇を小さくする食べ方です。

2.塩分を控える

白米だけを大量に食べることは困難です。塩分が無ければ白米は大量には食べられません。
つまり塩分を控えれば自ずと白米の摂取量を減らすことができます。

3.同じカロリーのあんパンとカレーパンの比較

食物成分の中で糖質・炭水化物は非常に吸収が早くすぐにエネルギー源となるため摂取すると血糖値は速やかに上昇します。
一方脂肪分は消化に時間がかかるためエネルギー源となるために時間を要します。
つまり摂取後血糖値の上昇は緩やかになります。従って同じカロリーのあんパンとカレーパンがあったら膵臓への負荷が軽いのはどちらかといえはカレーパンといえます。
味が重厚でしっかりしていることと血糖値の上がり方は必ずしも一致していないということです。
麺類は炭水化物を練って圧縮した食品ですから見た目以上にカロリーがあります。
夏場にあっさりとそうめんを食べるよりはカレーを食べる方が血糖値の上がり方は緩やかになります。
ただし最終的には全て吸収されますから摂取カロリーをよく理解した上で食事の中にうまく脂肪分を組み込むことで膵臓への負荷が軽くなるといえます。

これは糖尿病の食事療法では上級者向けの指導になります。

【熊野路クリニックでの薬物療法】

食事療法を遵守できても血糖値のコントロールがつかない場合は薬物療法を併用することになります。
糖尿病の薬物療法ではインスリンが最も有効な薬剤ですが、それ以外に下の図のような経口薬やGLP-1アナログという注射薬があります。

下の図にある内服薬は2つに分類できます。
一つは膵臓を刺激してインスリン分泌を促進させるものです。
スルホニル尿素剤、即効型インスリン分泌促進薬、DPP-4阻害薬がこれに当たります。
もう一つは膵臓以外に作用して血糖を下げる薬剤です。
αグルコシダーゼ阻害薬、ビグアナイド薬、チアゾリジン薬、SGLT2阻害薬がこれに当たります。
膵臓に直接作用しない後者の薬剤の方が膵臓への負荷は少ないですが血糖降下作用という点では前者の方が強いといえます。

当院では薬物療法においても膵臓への負荷が最も軽減される薬剤の選択を行っています。

糖尿病
糖尿病解説図
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